糖尿病内科、内科
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診療案内

糖尿病の合併症

もし、患者さんに糖尿病をなぜ治療するの?と聞かれたら十数年後におこる合併症を防ぐためですとお答えすると思います。
もうすぐ透析になってしまいますよと言われたり、視力が落ちてきて、本当に糖尿病の合併症が実感できるようになってから、突然糖尿病コントロールが良くなる患者さんもおられます。しかし、残念ながら合併症がかなり進行してから糖尿病のコントロールを良くしても、合併症の進行を止めることができないのが現状です。最近世界的な研究で合併症の進行について明らかにされてきたことについてお話しします。
糖尿病を発症して10年間厳しく血糖管理をした群(強化療法群)とそれほど厳しく管理されなかった群(従来療法群)がありました。10年後合併症の発生頻度を見てみると、明らかに強化療法群で合併症の発生頻度が低いことが分かりました。つまり、10年間がんばってきたことが、10年後に合併症予防という形で酬われたということになります。この2群はさらに10年間追跡調査されて、後半の10年間は同程度の血糖コントロールが行われました。20年後に2群を比べてみると、後半10年間は同じコントロールだったにも関わらず、依然なお強化療法群で合併症の発現頻度が低くなることが明らかにされたのです。これは、遺産効果と呼ばれ、糖尿病の初期治療の重要性を表していると思います。
つまり、糖尿病の合併症を引き起こさないためには、発症初期からの十分な血糖コントロールと継続的な血糖コントロールへのたゆまぬ努力が重要だと思われます。そこで簡単ではありますが、糖尿病がどういう合併症を引き起こすか書かせて頂きます。

(1)網膜症;糖尿病の3大合併症(網膜症、神経症、腎症)の一つで、網膜の血管が障害されるため、網膜出血や網膜剥離を引き起こし、視力低下や失明を引き起こします。現在、成人の失明の原因の第2位が糖尿病網膜症によるものです。

(2)神経症;四肢のしびれや冷感などが最初の神経症状です。次第に感覚低下も引き起こされ、低温やけどなどでも痛みを感じず、潰瘍や壊疽の引き金にもなることがあります。ひどくなると自律神経障害も引き起こし、排便コントロールができない、排尿障害、起立性低血圧など様々な症状が引き起こされます。

(3)腎症;早期腎症の段階では、微量アルブミン尿が認められます。この段階では、血糖コントロールを良好にし、ARB, ACEIと呼ばれるような降圧薬を服用することで、腎症が改善することがあります。顕性腎症と呼ばれる次の段階では、蛋白尿が出現し、腎機能が徐々に低下するようになります。この段階になると、血糖コントロールを改善してもなかなか蛋白尿が消失することが難しくなります。次に腎不全期と呼ばれる段階になってくると、非常に早いペースで腎臓の機能が低下して、最終的には血液透析が必要な状態となります。現在、透析導入の原因疾患として、糖尿病腎症が第1位になっています。

(4)大血管障害;上で述べたような3大合併症の他にも、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの比較的太い血管も糖尿病で傷害され、様々な合併症を引き起こします。脂質異常症、高血圧などの他の疾患を併せ持つことでこれらの合併症の発症頻度はさらに増加します。

以上、本稿では糖尿病の合併症について概説させて頂きました。もし本稿を読んで頂いた方で、健診を受けられていない方は是非一度健診を受けて下さい。もし、すでに糖尿病と診断されている方は、自分は今どの程度の段階なのか考えてみて下さい(主治医に聞いてみてください)。もし、減量の余地がある、運動をしていない方は是非十数年後の合併症予防のために、今からがんばってみて下さい。一番危険な方は、以前に糖尿病を指摘されたにも関わらず、治療を自己中断されている患者さんです。自己中断された患者さんで、再診されたときには合併症がすでに最終段階というのが一番多いように思います。自分は大丈夫と思わずに、是非再度受診して下さい。今ならまだ間に合うかもしれません。糖尿病を診させて頂く医師としては、患者さんがいかに合併症を起こさないようにしていくかが重要だと思っています。
本稿を読んで頂いた方が、健診を受けようと思われたり、受診しようと思われたり、糖尿病治療に向き合うきっかけとなれば幸いです。